MENU
おすすめの記事はこちら

十二日目 愛知-大阪

僕は名古屋港に降りて三重の方へ向けて出発した。名古屋の町はこれまで通ったあらゆる都会と同じように人々であふれかえり活気であふれかえっていた。腕時計を見て忙しそうなサラリーマンや、電話をしながらメモを取っているOLや、なにやら楽しそうに話している学生の雰囲気は、仙台や大阪や広島や福岡のそれと同じようなものを感じさせた。東京とは少し違っていた。あそこは特別だ。僕は二度目の金のしゃちほこを見てから、国道一号線に乗り西の方へ向けて出発した。

四日市を抜けて鈴鹿サーキットを通り過ぎ、三重の亀山で国道二十五号線に乗り換えて再び進んだ。僕は旅の行き道と同じ道を帰り道で通っていた。しばらく進んだそのとき見た記憶がある風景が、行き道とまさに同じ風景が、僕の目の前に現れた。僕は軽いデジャブに襲われた。でもそれは本当に前と同じ場所だった。行きの時は雪が降っていて雪化粧をかぶっていたが、帰りの今は雪が溶けて冬の枯草が姿を現していた。そこは谷が見える開けた場所で、山と山を結ぶきれいな橋が架かっているところだった。僕は行き道に感じていたことを思い出した。たしか国道二十五号線の草地や砂地、川のほとりにある散歩道のような道を延々と走ってきて、疲れていた気がする。またあの道を通るのかと一瞬僕は思った。そういえば「好奇心と勇気の関係性」についても考えていたな。あのときと今では何か変化があるだろうか? 具体的なことについてはわからなかったが、僕は「何か」が変わっていることを感じ取ることができた。しかし僕は「何が」変わったのだろう? しばらくその風景を眺めながら考えを巡らせていた。