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十一日目 宮城-愛知

僕がまず驚いたことはまだこんなにも復興が進んでいないのかということだった。ガードレールは破壊されてひしゃげたままにされており、道路は土嚢と砂で造られたものがあった。トラックはあちらこちらでせわしく作業をしていて、家が半分倒壊した状態で放置…

十一日目 宮城-愛知

フェリーの時間が近づいてきたので僕は仏堂の柵から手を離して島を眺めるのをやめた。いつまでもそんな風景を眺めているわけにはいかないのだ。三つある短い橋を渡ってから公園の向かいにあるお店まで歩いていき土産物をいくつか買った。買ったうちのひとつ…

十二日目 愛知-大阪

目を覚ましたとき二等の部屋の中は真っ暗だった。時計の針は五時半を指していた。朝の五時半だ。僕が船に乗ったのは昨日の昼一時だ。となると、僕は十六時間もここで眠っていたことになる。そんなに寝たのか? こんなにも長い間一度も起きずに寝ていたのは人…

十二日目 愛知-大阪

たびらいツアー予約 僕は名古屋港に降りて三重の方へ向けて出発した。名古屋の町はこれまで通ったあらゆる都会と同じように人々であふれかえり活気であふれかえっていた。腕時計を見て忙しそうなサラリーマンや、電話をしながらメモを取っているOLや、なに…

十二日目 愛知-大阪

僕はさまざまなことをこの旅で経験してきた。好奇心に駆られて出発し、恐怖と絶望を味わい、内省し葛藤し、たとえようもない寂しさや悲しさを東北で感じた。九州や中国や四国、関西と関東、東北へいく中で見方が変わり、考え方が変わり、行動が変わった。僕…

十二日目 愛知-大阪(完)

僕は奈良を越えて大阪へ来ていた。実家を目指して進み国道二十五号線の二度目の洗練を受けて、僕は故郷に帰ってきたのだ。大阪へ帰ってくると、通天閣や御堂筋線、なんばの夜の街があたりに彩り鮮やかな光を照らし出していた。僕はこれまでの旅で一番の安心…

九日目 神奈川-福島

僕は千代田区を抜けてどこが街の切れ目かわからないような街並みをずっと走っていた。品川区、港区、新宿区、千代田区、台東区、足立区、これまで通ってきたのはそんなところだった。どの街も同じように忙しく、同じようにものすごいスピードで動いていた。…

九日目 神奈川-福島

福島に到着した。東日本大震災の影響で原子力発電所の近くの道が通れなかったので、僕は迂回して福島の町へ行くことになった。白河についてから吉野家で牛丼を食べ、コンビニでジュースを買って飲んでから、再び福島市へ向けて進んだ。福島に入ると関東のに…

九日目 神奈川-福島

「叔母さん、ひさしぶり。」 「あら、ひさしぶりだね、どうしたの急に電話なんかしてきて。」 「少しびっくりするニュースがあるんだ。」と僕は言った。 「あら、なんだろうね」と叔母は期待した声で言った。 「実は僕、福島にきていて北海道まで行こうと思…

十日目 福島-宮城

気がつくと深夜パックの時間はとっくに過ぎていた。僕は眠っていたのか? 僕は急いで荷物をまとめ、十五分オーバーの料金を払った。叔母の言葉がこだまするまま僕は外に出た。太陽は白く凍てついた街にひさかたぶりの陽ざしを注ぎ、あたりは雪解けの水と眩し…

十日目 福島-宮城

僕は仙台駅に着いた。あたりはもう暗かった。僕は今日一日中なにをして過ごしたのか思いだせなかった。何をしていたんだろう? でも夜はあたりまえのようにやってきていて、町には明かりが灯り、人々はにぎわい、仙台の街は駅を中心に活気づきだしていた。道…

十日目 福島-宮城

僕はそのまま三十分待ってみたが、寂しさはおさまらなかった。僕は一人なのだ。僕は自分の気持ちを受け入れてそれを繰り返し頭の中で巡らせていると、どうでもいいような気持ちになってきた。どうでもいいというよりどうしようもないのだ。別に眠くもなかっ…

十一日目 宮城-愛知

朝七時に起きた僕はマクドナルドを出て、駅の近くにあった駐輪場まで歩いていった。駐輪場につくと料金を払ってTODAYを取り出してある場所へと向かった。帰りのフェリーまで時間があったので僕は松島に行くことにしたのだ。朝の仙台は交差点を行き交う…

六日目 大阪-静岡

愛知に入ると、弥富を抜けてすぐ名古屋に入った。周りに広がるビルの数にこれまでの奇妙な感覚は少しは拭われたようだった。しかし相変わらず空は低く雲がずっしりと覆い、高いビルはその上を突き抜けてしまいそうだった。おびただしい数の車が行き交い、わ…

六日目 大阪-静岡

僕は静岡の浜松まできていた。三重をぬけてから愛知に入り、金のしゃちほこを見たあとに、長い静岡を走ってきたのだ。静岡に入ってからはどこを走っていても常に富士山が見え、僕は常にその山から監視されているような気分になった。あたりは夕闇につつまれ…

七日目 静岡-神奈川

僕が起きると時刻は朝七時頃だった。九時間パックの終了時刻までは少し時間が余っていたので、僕はジュースを飲みにセルフサービスコーナーに行った。そこではさまざまな種類のさまざまなジュースがあった。僕はコップをとってボタンを押したが注ぎ口からジ…

七日目 静岡-神奈川

芦ノ湖が見えてくると道路標識は箱根に入ったことを知らせた。そこは高低差が大きくて僕は何度も蛇のようにくねくねとした道を進まなくてはならなかったが、街や景色の雰囲気はじつに優美だった。高い位置から湖と山の眺望が利いて一面が見晴らせた。街では…

七日目 静岡-神奈川

大学に着くと彼はすでにコーヒーを飲んで座っていた。僕は近づいて声をかけた。 「よう。久しぶりだな。」 「ほんと久しぶりだな。」と彼は立ち上がって言った。 「変わらないなお前は。」と僕は言った。「お前もな。」彼も続けた。 僕たちは小学生の頃から…

八日目 神奈川滞在

僕はもう一日彼の家で泊まった。その日彼は用事があるというので、僕は彼の用事が終わるまで家でテレビを見ていたが、おもしろくもないのでコンセントから切って音楽をかけた。Mr.Childrenの「KIND OF LOVE」と「Its a wonde…

九日目 神奈川-福島

僕は横浜を出発して東京に来ていた。そこは東京の中心地ともいえる千代田区のあたりで朝からこれまでに感じたことのない種類の雰囲気が街全体を覆っていた。左右に並んだ高層ビルは今にも襲いかかってきそうで、すべての建物は実際的な構造をしており、空き…

五日目 兵庫-大阪

僕がベッドに寝て、彼は通路に座椅子を敷いて寝ていた。僕は起き上がって、頭の中に漂っているちらちらとしたものを眺めながら、漠然とした意識でリビングを見渡した。すると彼が起きてきたので、今日は大阪に行くと伝えると、彼も来ると言った。大阪にいる…

五日目 兵庫-大阪

イオンモールのサンマルクカフェに着いたとき彼は既にそこにいた。彼はじっと珍しい動物でも見るような目で僕の姿を見ていた。 「久しぶりに会ったと思えば、なんだその格好は?」と彼は驚いたように言った。 「いろいろあってね、旅に出ているんだ。」と僕…

六日目 大阪-静岡

僕は今日泊めてもらう友達の家の最寄駅へ向かっていた。僕たちは最寄駅で待ち合わせをしていたのだ。駅に着くと友達はもう待っていた。 「よう。久しぶり。」と友達は言った。 「ひさしぶりだな。」と僕は言った。この会話をするのは今日二回目だ。 「よく来…

六日目 大阪-静岡

僕は昨日泊まった友達の家を出発しようとしていた。豪華できれいに装飾されたその家は、閑静な住宅街の一角に周りとは不釣り合いの風貌で堂々と立っていた。その友達は会社の経営者の息子だった。朝ご飯にはさまざまな種類のパンがお皿に盛られて、紅茶かコ…

六日目 大阪-静岡

それから僕は奈良へ向かおうとしていた。TODAYのエンジンはいつもより調子のいい音を吹かせてその身を軽々と前へ運んでいた。途中でガソリンスタンドがあったのでそこに入って給油をし、エネルギーを満タンにした状態で再び進み始めた。空は曇っていて…

六日目 大阪-静岡

僕は何のために旅に出ているのだろう。さっきのふとした思いが靴の中の小石のように僕の頭のどこかで残り続けていた。僕が旅をし始めたのは約一年前からだった。それまで大阪に住んでいて、鹿児島へきたときに大自然のすごさに圧倒されて、気がつけば旅をす…

六日目 大阪-静岡

奈良の奇妙な集落を抜けてから三重へ入った。国道二十五号線から国道一号線に乗り換えて亀山に入り、ずいぶんと久しぶりに町の風景が見えてきた。間に合わせで作ったようなチェーン店やファストフード店は周りの平野風景と場違いに建っていた。僕は自動販売…

四日目 愛媛-兵庫

僕は長い眠りから覚めた。いったいどのくらい眠っていたのだろう。昨夜の暴力的と言ってもいいくらいの激しい眠りは夢一つ見させてはくれなかった。テントの外に出るとあたりは急激に気温が下がっており、あらゆるものはその表面に薄い氷の膜を張っていた。…

四日目 愛媛-兵庫

今治を出て少し進むと新居浜に出た。そこは四国霊場八十八か所めぐりの伊予の霊場がいくつかあるあたりだった。ついさっき通ってきた西条にも霊場がいくつかあり、僕は案内板に興味をひかれてここまで走ってきたのだ。あたりを見回すとお遍路さんの姿が何人…

四日目 愛媛-兵庫

今治を出て少し進むと、香川に出た。香川と言えばうどんだと僕は即座に思った。別に腹が減っていたわけではない。それどころか朝食はさっき食べて空腹なんてほとんど感じなかった。でもせっかくきた香川を素通りしてしまうわけにもいかない。僕はとにかく讃…