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二日目 大分-広島

僕の意識のふちを蹴ってきたのはクラクションの音だった。渋滞している。僕はどうしていたのだろう?頭に手があったことを思うとふさぎ込んでいたのかもしれない。どれくらい時間が経過したか分からない。はっきりとしていることは、渋滞していることと、絶望的に体調が悪いことと、もう帰れないこと。何ひとついいことがない。地球は終るんじゃないか。いや、まてよ。帰れないんだったら前に進むしかない。僕は前しか向いていない。誰かがそう言っていた。自分かもしれない。誰でもいい。とにかく前に進もう。地球はまだ終わらない。なぜこの旅に出たか思いだしてみろ。僕はTODAYにまたがり渋滞の道路に出た。横の隙間を縫っていくように低速度で走り続けた。とにかく前に進もう。もうこの言葉しか頭になかった。すると、一軒の店の灯りがあった。地図を置いてそうな店だ。すかさずTODAYを止めて-今回は転倒しなかった-店へ入り、今どこなのか、どこへいくべきなのかを聞いた。店員はやさしく答えてくれて僕はより細かいその地図を買った。店員の言葉は天からの啓示のように感じられた。心はまだ乖離のような感覚を失っていなかったが、それでもボタンを一つか二つ掛け合わせたように少しは体と近づいていた。

教わった道を進み何分かすると大竹市についた。大竹市の道路標識を見つけたときは心躍った。僕は町を抜けてさらにもう少し進み、廿日市市までたどり着いた。寝れそうな公園を探したがそんなものは見つからなかった。三十分以上探し続けたがなかった。また不安になりそうだった。今日は寝るところがないんじゃないかと思うとまた僕の意識を奪っていく歪んでどろどろとしたものが僕の体を浸食していきそうだった。探しながら同じ道をぐるぐるまわっているうちに、息を潜めていたどろどろとしたものが僕の意識を支配し始めようとしていた。またあれがくる。それだけはいやだった。寂しさとトラウマが脳裏を何度もよぎり、人がいて二十四時間経営している場所へ僕の足を運ばせた。

僕の今日の宿はファミレスだった。