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二日目 大分-広島

福岡をぬけた。関門トンネルを抜けて山口へ到達したのだ。降り立った地は下関で、そこには有無を言わせない見事に立派な橋が建っていた。関門橋だ。僕は山口側からその橋と関門海峡が同時に見える風景を眺めていた。海風が心地よく鳥が気持ちよさそうに飛んでいる。周りにはジョギングをしている人もいれば、仲良く手をつないで歩いているカップルも犬を散歩している老夫婦もいる。平和なその風景を眺めていると僕は落ち着いた静かな気持ちになることができた。松の木かげにベンチがいくつか置かれ、そこからは歴史上の人物らしい銅像が見えた。だれかがその傍で紙芝居をしていた。周りにはギャラリーができてにぎやかにそのショーをたのしんでいる。僕は本州へ入ったのだ。ここからはいったん東に真っ直ぐすすむことになる。案内所の人に地図をもらって山口の抜け方を教えてもらった。時刻は昼下がりの頃だった。

最初の方はずっと海沿いに国道九号線が走っているため、僕は海を横目に見ながら走ることができた。潮風を浴びながら心地よいスピードで、自分の好きな方向に進んでいるあの感覚。気持ちよくて何もかもがうまくいきそうな気がしてくる。しばらく走ると国道二号線に切り替わり、町の方へと景色はシフトしていった。もう海の向こうに見える福岡の山間は見えない。コンビニやファッション店、レンタルビデオ店や飲食チェーン店が並び、町で営む人々の場所へ入りこんだ。これはこれで悪くない、と僕は思った。何かしらの安心感はある。さっきの落ち着いた気持ちとは種類が違うが、人の営みを感じることが出来るのは安心感につながる。そう思いながら僕はさらに東へ進みつづけた。