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二日目 大分-広島

もうすぐ大分をぬけそうだ。福岡のナンバープレートがあたりを埋めはじめたころ、あたりは昼に近づいていた。太陽は燦々と照り付け、冬にもかかわらず上着がいらないほどの気温だった。風は冷たいがあたたかい太陽の陽ざしが道行く人を活気づけていた。忙しそうに早歩きするサラリーマンと、雨も降っていないのに傘をさしているOL、大発見でもしたかのように夢中で話している小学生の自転車の群れ。どこの町に行ってもこの風景は変わらない。

僕は急にラーメンが食べたくなった。たぶんもうすぐ博多だ。博多と言えばラーメンだと僕は思った。この旅では各地のおいしい名物を食べてまわろうというのも目的のひとつに入っていた。美味しそうなラーメン屋さんを探してTODAYを停めて、メニューを見てからそこへ入った。店舗の色彩がきれいで、ある程度客も入っていて、駐車場が大きい店だ。食べ物屋さんを選ぶひとつの基準としている。入ってすぐに怒号のように元気がいい挨拶が響き、店員が来て僕は席へ案内された。豚骨スープのほんのり濃厚な香りが胃を刺激し、カウンターにはネギやにんにくや紅ショウガが並んでいる。周りの客の麺をすする音やスープをすする音、さらにはあつあつのごはんを口へはこぶときのはふっはふっという意味のない声を発している隣の客に僕は限界になりラーメン(大)とごはん(大)を注文した。ラーメンは芸術品のように美しく盛られていた。スープが黄金色で、麺が中央に盛られていて、その上にチャーシューが三枚並べられ、色彩を持たせるための緑のネギと濃い橙色の半熟卵があった。メンマは一か所に集められ、最後に海苔がどんぶりをはみ出すようにそり立っていた。僕は早速カウンターにあったネギとにんにくと紅ショウガを入れて食べた。感想はまあまあだった。断っておくが博多ラーメンはうまい。僕はこのあとも食べる機会があって-何年か後の話だが-博多ラーメンはとても美味しいと思った。もつ鍋を食べた後にシメでたべたから余計においしかった。でも僕のあたったこの店ははずれと言っていいかもしれない。期待していた分の落胆は大きかった。一つの名前を共有したものがあまりいい影響を与えなかったときイメージが悪くなってしまう。難しいものだなと僕は思った。まあお腹いっぱいになったからどうでもいいやと思い勘定を払ってから店を出て、外の風を受けて再び九州を北へ進んだ。