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二日目 大分-広島

僕はポケットからiPodを出し、Mr.Childrenの(an imitation)blood orangeを聴いた。そのアルバムは全部で十一曲収録されており五十九分で曲が一周する。(1)hyponosisから始まり(11)祈り~涙の軌道で終わる。二〇十二年に発売されてオリコン週間一位、十一月度月間一位、年間八位を獲得した。シングル曲は、「かぞえうた」、「祈り~涙の軌道/End of the day/pieces」、「hyponosis」が収録されている。僕はこのアルバムが好きだ。大好きだ。一人旅の道中、暇を持て余さないように購入したアルバムだった。ちょうど旅の出発時期とアルバムの発売時期が近かったのでこれを選んだ。事前に購入していたが一度も聞かずに置いておき、旅に出てから聞きはじめようとあたためておいたものなのだ。重低音のドラムが響き「hyponosis」が始まり、ヴォーカルの桜井和寿さんが叫び声にも似た声量で歌い上げ、軽快なステップでダンスを踊り始めそうな「Marshmallow day」が流れて、最後には心の清らかな部分にある川のほとりにいるような気持ちにさせてくれる「祈り~涙の軌道」でさよならを告げる。僕はこのアルバムを聴くと今でもこの旅のことを思いだす。あの頃といまを結びつけてくれるいわば架け橋のような音楽なのだ。

太平山と鶴見岳をみながら別府を後にして僕は九州の北へ向かい進んでいた。わりと高台のところで振り返ると別府の町が一望できた。きれいに上る湯気と温泉宿、ひときわ目立つ別府タワーが見えた。僕の出発した鹿児島はもっと奥の方でひっそりと身を潜めている。「もう見えないところまできてしまったんだな」ほとんど無意識だったが声に出して言った。懐かしいような気がした。僕はTODAYにまたがってハンドルを握り直し、またエンジンをかけて前へと進みはじめた。