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三日目 広島-愛媛

しまなみ海道の入り口に着いたとき、とうとう旅が始まった感じがした。見渡す限り大海原の入り口に立っている気がした。旅行に行く前の飛行機に乗ったあの感じと似ていた。好奇心が間欠泉のように湧き上がり、僕の体を綿のように軽くした。周りの人々も僕を称えるためにそこにいる気がして、僕はそれに応えるように橋を渡った。午後四時ごろになると夕暮れは樹木や草を淡く染めていてその到来を教えていたが、僕は海の青さしか見えていなかった。今度は嫌な予感はしない。いい予感がする。大冒険が始まる予感だ。カモメが空を舞って僕の到来を歓迎してくれていた。入り口の島である向島でガソリンを満タンに入れて、僕はこの旅で唯一南に向かって走り始めた。目指す方向の北とは逆だ。でもそんなことどうでもよかった。好奇心が僕の体を支配していた。

向島を抜けて因島に入るとき橋を渡った。その橋は、二階建て構造になっており橋の下に連結して歩行者・二輪車専用道があった。周りには素晴らしい風景が一面に広がっていて、橋の道にいるのは僕一人だけだった。一直線に続くまっすぐな道を眺めながらTODAYのハンドルを握っていると、なんだか自分が小学生の頃に戻ったような気がした。僕は誰も知らない秘密の場所にいる。誰にも僕の姿を見ることはできない。そう思うととてもワクワクした気持ちになれた。因島も抜けて生口島に行く橋を渡るとき-この橋は自動車専用道に歩行者・二輪車専用道が併設されている-瀬戸内海の大小さまざまな島に夕日が沈んでいくのが見えた。その風景を見ていると僕の心は窮屈になり、熱くなり、潮が引くように落ち着きを取り戻していった。海は寂しそうに見えたがそこに孤独のようなものは感じられなかった。