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三日目 広島-愛媛

僕は尾道にきていた。さきほどの雪雲はまぼろしだったかのようにどこかへいき、空は深くて疑いの余地もないくらいに明るく輝いていた。その空は南国のビーチで見る青い空を僕に思わせた。晴れたのだ。見わたす限りの大洋に浮かぶ小さなボートのように僕は広大な国道二号線を海へ向かって走っていた。尾道では港町特有の潮風のにおいと、カモメの鳴き声、ボートが岸にぶつかる音がした。そういえば海沿いの町ばかり来ているなと思いを巡らせながら「それも仕方ない、太平洋側を進んでいるのだから」と結論を出してさらに東へ向かってTODAYを進めた。

TODAYがそのころ約千キロを走行していたので僕はオイル交換をした。HondaCars栗原店に立ち寄り、待ち時間にはあたたかいココアをくれた。ついでに、と言って店員さんはしまなみ海道までの道のりをプリントアウトして道順を教えてくれた。優しそうな顔をした女の人だった。この人は僕がここまでどれだけつらい思いをしているのか分かっているといった風に対応してくれた。もしかしたらこの人も一人旅に出たことがあるのかもしれないと僕は思った。旅人にはそのような勘が身につくのだ。一目見ただけでわかるときがある。