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六日目 大阪-静岡

僕は今日泊めてもらう友達の家の最寄駅へ向かっていた。僕たちは最寄駅で待ち合わせをしていたのだ。駅に着くと友達はもう待っていた。

「よう。久しぶり。」と友達は言った。

「ひさしぶりだな。」と僕は言った。この会話をするのは今日二回目だ。

「よく来たな、ここまで。」と彼は本当に驚いたような顔で言った。

「ああ、いろいろなことがあったよ、ここまで。でもまあ積もる話は家についてからゆっくりとしよう。」と僕は言った。

僕はバイクをおりてエンジンを消し、手で押して友達の家まで向かった。僕と友達は並ぶようにして道路の歩道を歩いていた。夜の大阪の空気は僕に懐かしさを感じさせていた。

「そういえば昔、おまえ自転車で大阪から清水寺まで行ったことあったよな?」と友達は言った。

「そんなこともあったな。」と僕は懐かしそうに言った。

「あれは百キロはあったよな。」と友達は聞いてきた。

「あったな。深夜0時から出て朝の九時半に着いたよ。」と僕は答えた。

「しかも二人乗りで行ったしな。」と彼は言って、一回前を向いてから僕の方を向きなおしてまた続けた。「でもなんで旅ばっかりするんだ?」

「理由なんてないよ。」と僕は言った。そして続けて言った。「僕が何かしたいことをするときはそこに理由はないんだ。体が先に動いてしまうんだ。理由があるとすればやりたいから、だよ。でも僕はそういう力を信じてる。理由のあることは納得はさせられるけど、理由のないことは共感させられる時があるだろ。理論や損得よりも共感がいちばん力を持っていると僕は思うんだ。」

「そうだな。」と彼は言った。

「理論や損得で『人を動かす』よりも、共感で『人が動く』方がずっとすごいんだ。僕はそれを信じている。」と僕は言った。それから自分が話し過ぎたことにだんだんと恥ずかしくなってきた。

「ごめん、話すぎたよ。」と僕は言った。

「いいんだ。」と彼は言った。「お前らしい。」

それから僕らは十分ほど歩き、彼の家に着いた。あたりはもう暗くなって近所の家の電気はもうほとんどが消えていた。