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七日目 静岡-神奈川

僕が起きると時刻は朝七時頃だった。九時間パックの終了時刻までは少し時間が余っていたので、僕はジュースを飲みにセルフサービスコーナーに行った。そこではさまざまな種類のさまざまなジュースがあった。僕はコップをとってボタンを押したが注ぎ口からジュースはうまく出てこなかった。うまくいかなくて僕が悪戦苦闘していると、掃除をしている店員と目が合った。店員はすぐに目をそらして「私は掃除をしているんです」といった風にじつに素早く掃除にもどった。やさしくないなと僕は思った。彼らは何かに憑りつかれた様にルールを守り、自分の課された仕事だけを遂行することに労力を使っている。僕が今まで九州やしまなみ海道で受けたようなやさしさはそこでは微塵も感じられなかった。僕はあきらめて部屋に戻り荷物をまとめてから、レジに行って支払いを済ませ外に出た。

それから僕は横浜へ向かおうとしていた。なぜなら横浜に長い付き合いの親友がいるからだ。彼は横浜の大学に通っている。僕は彼に会うのが楽しみで仕方なかった。彼は僕が鹿児島からきたことに驚くだろうし、僕の方もこれまでの旅の話をたくさんしたかったからだ。僕はTODAYに鍵を差し込んでセルを押し、エンジンをかけてから出発した。 静岡はじつに長かった。僕は国道一号線を進み、磐田を通り、静岡市を通り、富士を通り、やっと静岡を抜けたのだ。その間ずっとどこを走っていても常に富士山が見えて、僕は常にその山から監視されているような気分になった。でも静岡の国道一号線は開けた景色でとても綺麗だった。相変わらず富士山は常に見えたが、手前には平野が広がり、空の青と雲の白、草木の緑が見事な色彩を映しだしていた。場所によっては海が見えて、きれいな川にかかった橋を渡ることもあった。だから僕は静岡を抜けるのには退屈はしなかった。しばらく進んで富士に着いて僕はそこで展望台にのぼり富士山をじっくりと眺めた。近い場所で富士山を一時間半見たのでもう一生分見たと満足して下にあった売店で土産物を買った。それから沼津を抜けた。