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六日目 大阪-静岡

僕は静岡の浜松まできていた。三重をぬけてから愛知に入り、金のしゃちほこを見たあとに、長い静岡を走ってきたのだ。静岡に入ってからはどこを走っていても常に富士山が見え、僕は常にその山から監視されているような気分になった。あたりは夕闇につつまれて夜の街灯の明かりがあたりをぼんやりと照らし始めていた。僕は浜松駅のあたりにいた。大都会とは言えないにしろ繁栄という判を押すには十分すぎるほどの町で、国道一号線沿いには大型スーパーマーケットがあり、ボウリングやカラオケなどの娯楽施設があり、コンビニがところせましと立ち並んでいた。僕はここでテントを張るのは不可能だろうなと思った。そんなことをするには目立ちすぎるし、あと気のせいかもしれないが、人々が僕に向けている視線に何かしら軽蔑のようなものが感じられたからだ。それは関東の方へ近づくにつれて感じていたことだった。たしかに僕の格好は無様だし、TODAYはそば屋の出前機がついたような姿だが、そこまで汚いものを見るような目で見なくてもいいのにと僕は思った。テントについてはもちろん北へ行くにつれて寒くなってきたというのが理由の一つとして大きな割合を占めていた。もうテントを張ることはないだろうなと僕は思った。それから決心した僕はネットカフェに泊まることにした。ネットカフェは二十四時間営業していて、マンガやパソコン、ちょっとしたゲームなどが揃っており、ビリヤードやダーツがついた所まである。僕は部屋の予約をし(料金は後払いなのだ)、店員に案内された。その際も店員の態度はどこか冷たく技巧的に見えた。それは僕が悪いのか地域的なものなのか僕にはわからなかった。とにかく僕は自分の部屋で一人の時間を有効に使い、その日の活動を無事に終えた。